富山県南砺市/データセンター計画

反対したいわけじゃない。調べてほしい。それだけなんです。

南砺の里山に、国内最大級のデータセンターをつくる計画が進んでいます。わたしたちは、この計画を憎んでいるわけでも、新しい技術を拒みたいわけでもありません。ただ、これだけ大きなものを町に入れるのに、その影響を丸ごと調べた資料が、まだ一枚も出てきていないのです。

これは、ここに暮らしている人たちの話を聞いて、事実だけを並べた手紙です。書いてあることには、すべて出どころがあります。

南砺の里山の抽象イラスト 重なる山の稜線、里山の木立、小さな家、流れる水の線を、実在の場所を写さない抽象的な図形で表しています。

イラストはイメージです。

01ここで暮らしている人たち

計画地のまわりには、農薬や肥料を使わない自然栽培で野菜や米をつくっている人がいます。ミツバチを飼って、蜜をしぼっている人がいます。山を手入れしている人、湧き水で暮らしを立てている人がいます。

派手な町ではありません。冬は雪が深く、若い人は減っています。それでも、ここの水と空気で食べものをつくることを選んだ人たちが、たしかに住んでいます。

何かが変わったとき、たぶんいちばん先に気づくのは、わたしたちです。

ミツバチは、花の咲きぐあいや気温のわずかな変化に、人間より先に反応します。畑をやっていると、水の匂いが変わったことに気づきます。それは科学ではなく、感覚です。でも、その感覚を持っている人間が、この土地には何十人もいる。だからわたしたちは、心配しているのではなく、確かめたいのです。

02新しい薬を飲む前には、検査をする

お医者さんは、新しい薬を出す前に検査をしますよね。血圧を測って、血液を調べて、腎臓や肝臓の具合を見て、いまのこの身体にこの薬を入れて大丈夫かを確かめる。

それは、薬が悪いからではありません。順番の問題です。

町にも身体があります。山に降った雨が、土にしみこんで、湧いて、田んぼを通って、川になって、海へ行く。この一続きのめぐりを「流域(りゅういき)」と呼びます。町の身体は、流域です。

そこに、とても大きなものを入れようとしています。電気を吸い、熱を出し、音を出し続けるものを。ならば先に、いまの町の身体を調べる。それが順番のはずです。

その検査が、まだ行われていません。
雨が山に降り、土にしみて湧き水になり、田と川を通って海へ向かう一続きの流れを、集落とともに描いた抽象イラスト(実在の場所ではありません)
イラストはイメージです。雨、土、湧き水、田、川、海。町の身体を一続きの流れとして捉えるためのグラフィックです。

「環境アセスメント」がない、とはどういうことか

大きな工事の前に、環境への影響をあらかじめ予測して、評価して、他のやり方と比べて、公表する。この手続きを環境アセスメントといいます。日本の環境影響評価法が対象にしているのは、道路・ダム・鉄道・空港・発電所など13種類。データセンターは、入っていません。

富山県の条例でも、この計画は対象になりません。これはわたしたちの推測ではなく、南砺市が公式のQ&A(2026年7月24日時点)に「環境アセスメントの対象ではありません」と書いています。同じ答えのなかで市は、水質・電磁波・気温・騒音について着工前に調査に着手したい、調査の内容は地元と協議して決める、公開は必要に応じて検討する、とも書いています。

つまり、調べること自体が任意で、何をどこまで調べるかも、結果を出すかどうかも、これから決まる、ということです。これに反対するのではなく、これでいいのですか、と聞いています。

※ただし富山県の条例は、県立自然公園などの「自然環境特別配慮地域」に掛かる場合、敷地1ヘクタール以上で対象になります。この事業地がその区域に掛かるかどうかは、わたしたちもまだ確認できていません。ここは県に確認したいと思っています。

2026年6月24日には、市・事業者・地元の協議会の三者で協定が結ばれ、水質・騒音・排熱(気温)・電磁波の4項目を月1回はかり、その記録を事業者が10年間保管して、市がホームページで公表する、という枠組みができました。(公表を何年続けるのかは、協定には書かれていません。)それは前進だと思っています。正直にそう書きます。

協定には、生態系の調査や、夜間照明への配慮も書かれています。ただ、生態系調査は「調査方法、調査頻度、調査地域などの内容については別途協議により実施する」とされ、中身はまだ決まっていません。

三者協定は、水質・騒音・排熱(気温)・電磁波の4項目を月1回測り、事業者が10年間保管し、市が公表する枠組みです。

環境アセスメントは、つくる前に影響を予測し、他のやり方と比べ、公表する手続きです。国の法律が対象にする13種類にデータセンターは入っておらず、南砺市も公式Q&A(2026年7月24日時点)で県条例の対象ではないと説明しています。

※県条例は、県立自然公園などの「自然環境特別配慮地域」に掛かる場合、敷地1ヘクタール以上で対象になります。この事業地が該当するかは、わたしたちもまだ確認できていません。

そして、これはできたあとに測る約束であって、つくる前に調べて評価する手続きではありません。地下水、山や土が雨をためて地下水を育てるはたらき(水源のかん養)、電力、そして最終形の3.1ギガワット(3.1GW)まで広がったときの積み重ねの影響は、月1回はかる4項目にも、協定にも入っていません。

03どれくらい大きいのか

数字は、脅すために置くのではありません。大きさが分からないと、調べるべきかどうかも判断できないからです。すべて公表されている数字と、その計算です。

300MW 第1期の電力使用量 南砺市の説明。建物そのものは最大400MW規模の設計とされています。
3.1GW 最終構想(3.1ギガワット) 第1期の8〜10倍。市は「電力供給体制も場所も白紙」と公式Q&Aに書いています。
約20倍 南砺市の全世帯が1年に使う家庭の電気と比べて いちばん左の1本が、南砺市の全世帯が1年に使う家庭の電気(約0.92億kWh)。同じ太さのバー20本が、この計画の1年分(約18.4億kWh)です。 300MWを負荷率70%(データセンターは契約容量の約7割を使い続けるという業界側の想定)で1年分に直すと約18.4億kWh。南砺市の全17,435戸の家庭の電気は約0.92億kWh。計算過程は下の「出典」に書きました。

※kW(そのときの大きさ)とkWh(1年間の量)は別のものです。ここでは市が公表している電力使用量から、公表されている1世帯あたりの平均使用量(原単位)を使って1年分に直しています。

※市の説明では300MWは「電力使用量」、400MWは「建物自体の最大設計規模」です。業界の負荷率70%は契約容量に対する想定なので、ここでは最も控えめになるよう300MWにさらに70%をかけました。300MWをそのまま1年分に直すと約26.3億kWh=約28倍、400MWに負荷率70%をかけると約24.5億kWh=約27倍になります。いちばん小さく見える数え方を採りました。

04よく言われることに、正直に答えます

わたしたちも、同じことを言われます。もっともだと思う部分は、もっともだと書きます。そのうえで、それでも残る問いを書きます。

「跡地なんだから、使ったほうがいいでしょ」
半分は、そのとおりです

第1期の約13ヘクタールは、市の体育館やグラウンドなどがあった市有地が中心です。「使われていない場所を活かしたほうがいい」という感覚も、この土地に住んでいれば分かります。

ただ、市の公式Q&Aには「誘致予定箇所は森林が多く含まれております」「開発の基準により森林を一定割合残す」とも書かれています。市の事業概要も「旧里山野外緑地広場等を中心とした約13ha」という書き方です。どれだけの森林が、どのように変わるのか。その数字は、まだどこにも出ていません。

そして、13ヘクタールは入口です。計画の名前は「南砺キャンパス」。最終形は3.1ギガワットで、第1期の8〜10倍。開発会社の代表は新聞の取材に、将来はさらに候補地を取得して国内最大の集積地にしたい、と話しています。そして市自身が、3.1ギガワットについては場所も電力の供給体制も白紙だと公式Q&Aに書いています。

入口の13ヘクタールは、たしかに市有地の跡地が中心です。問題は、その先の全体像を、まだ誰も調べていないことです。

「水は使わないんでしょ?」
はい、その予定です

南砺市の公式Q&Aには、この場所には冷却に使える地下水や工業用水がほとんどないため「空冷若しくは特殊な液体による循環式の冷却方法しか選択肢はないと考えています」と市は書いています(=市の見込みであって、確定した仕様ではありません)。冷却用の排水も出ない、とされています。だからわたしたちは「水が枯れる」とは言いません。

ただ、空気で冷やすということは、そのぶん電気をよけいに使うということでもあります。アマゾンの担当者は、水を使う冷やし方にすると夏のピーク時に施設の電力を25〜35%減らせると説明しています(米E&E News・2026年7月9日)。裏返せば、水を使わない冷やし方は、それだけ多く電気を使う、ということです。

そして、使った電気は、ほとんどぜんぶ熱になって外へ出ていきます。参考までに、サーバー自体が使う電気が36メガワット(IT容量)の規模のデータセンターの排熱は、戸建て2,300戸分の暖房や給湯をまかなえるほどの熱量だという試算があります(NTTファシリティーズ・2025年10月)。音も残ります。

水を使わないから安心、でも、水を使わないから危ない、でもありません。だから調べてほしい、なのです。

「経済効果があるんでしょ?」
あるかもしれません

市の試算では、5,000億円の投資があったと仮定して固定資産税が年に約72億円。国からの交付税が減る分を差し引いても、年に約20億円が市に残る見込みだとされています。南砺市の固定資産税は年およそ35億円ですから、大きな数字です。雇用は、市の公式Q&Aで第1フェーズ約240人(開発事業者の説明)とされています。

いっぽうで、アメリカ・バージニア州議会の調査機関がまとめた公式資料には、こう書かれています。データセンターは建設中は最大1,500人が働くが、運用が始まると施設の規模のわりに少人数で、だいたい50人ほどだと。バージニア州は、アメリカでデータセンターがもっとも集まっている州のひとつです。同じ調査機関の資料には、州内のある郡では地方税収の31%をデータセンターが占める、とも書かれています。

どちらが南砺の現実になるのか、わたしたちには分かりません。分かりたいのです。増える税収と、負うことになる責任と、残る仕事の数を、同じ一枚の紙の上に並べた資料を、まだ誰も見ていません。

「もう決まったことでしょ?」
進んでいるのは事実です

2026年7月10日に起工式が行われました。土地の売買契約も済んでいます。進んでいます。それは事実です。

でも、決まったあとで調べ直した場所があります。アメリカのニューヨーク州は2026年7月14日、知事の執行命令で、50メガワット以上のデータセンターに対する州の許認可を一時的に止めました。理由は「反対だから」ではありません。エネルギー・水・大気・騒音・地域への影響をまとめて評価する報告書ができるまで、いったん立ち止まる、というものです。(州議会はさらに厳しい20メガワットの法案を可決しており、州の中でもまだ議論は続いています。)

日本でも動いています。東京都は2026年3月、都道府県では初めてとみられるデータセンターのガイドラインをつくりました。業界団体も同じ年の5月に、地域と共生するための指針を出しています。南砺の三者協定も、その指針を参考にしたと市は書いています。

ルールは、あとからでもつくれます。止めることが目的ではありません。順番を、いま取り戻したいのです。

05わたしたちがやってきたこと

怒鳴ったことも、工事を止めに行ったことも、一度もありません。やってきたのは、聞くこと、調べること、書くことだけです。

  • およそ100人が集まりました近所の人、農家、養蜂をしている人、勤め人。特定の政党や団体の活動ではありません。
  • 市との意見交換会の場に出ました2026年2月5日。市の公式ページの経過にも、この日の意見交換会の記録が残っています。その後も市と地元のあいだで情報交換会が重ねられています。
  • 弁護士に相談しました返ってきたのは「いまの法律では、この建設そのものを違法とは言いにくい」という答えでした。それも、正直に受け止めています。
  • 勉強会を開きました2026年7月4日、地元・西太美地区で。排熱と健康の問題を取り上げました。地元紙も報じています。
  • 署名を集めました一軒ずつ、手渡しで。
  • 市長への公開質問状を準備しています推測ではなく、答えていただきたい問いを、文書にして出します。

わたしたちは、市の職員の方々を敵だと思っていません。人口が減る町で、税収を増やそうとするのは仕事です。ただ、その判断のもとになる資料が足りない、と言っています。

06子どもたちに残したいもの

「里山を守るのか、テクノロジーを取るのか」——そういう二択だと思われているなら、それは違います。

両方だと思っています。
これではなく:里山 OR テクノロジー こちらです:里山 AND テクノロジー
段々畑と水路、花とミツバチ、そしてデータの格子が、対立せず一つの風景に編み込まれている様子を描いた抽象イラスト
イラストはイメージです。里山か技術かの二択ではなく、調べる順番を通って両方を考えるためのグラフィックです。

AIも、データセンターも、これからの社会に必要なものでしょう。わたしたちの子どもや孫が、その仕事に就くかもしれません。この土地から、そういう産業が育つなら、それは嬉しいことです。

問題は、どちらを選ぶかではありません。順番です。

調べてから、決める。町の身体に何が起きるのかを見てから、置き方を決める。そうやって置かれたものなら、たぶん、この土地に長くいられます。急いで置かれたものは、たいてい、あとで誰かが困ります。

わたしたちが子どもたちに残したいのは、里山でもテクノロジーでもなく、大事なことは調べてから決めた町だ、という記憶です。

07あなたにできること

  • 1/知る

    何が、いつ、どんな順番で起きたのか。日付と出典だけを並べたページをつくりました。5分で読めます。

    何が起きているか →
  • 2/家族と話す

    賛成でも反対でも構いません。「うちの町にこういう話があるらしい」と、夕ごはんのときに一度だけ話してみてください。知っている人が増えることが、いちばん効きます。

  • 3/このページを渡す

    南砺の人にも、南砺の外の人にも。同じことは、あなたの町でも起こりえます。煽らずに、事実だけを書いたつもりです。そのまま渡してもらって大丈夫です。

08出典

このページに書いた事実には、すべて出どころがあります。確認できたものだけを載せました。確認できていないうわさ話は、書いていません。(すべて2026年7月27日にアクセス)